「DX」– 今やビジネスシーンにおける最重要キーワードの一つと言っても過言ではありません。一方で、この言葉だけが独り歩きし、本来の意味が曖昧になっている現状も見受けられます。

単なるシステム導入や業務自動化だけの活動をDXと呼ぶべきではありません。本来、DXとは顧客や社会のニーズを起点としたビジネスモデルの変革のことを指します。

この抜本的な改革を実現する上での重要な要素は「顧客中心主義」です。自社の顧客を理解した上で、顧客体験向上のために、どのようにデジタル技術を活用するのかを考えていく必要があります。

DXという言葉の落とし穴

DX支援やITサービス提供を担う事業者の様子を見ていると、多くの企業が「データやデジタル技術」といった手段のみに偏重しているようです。データ分析やシステム導入は、あくまで手段であり、それによってビジネスモデルの変革が実現できるか否かは、あくまで、その取り組みをするに至ったビジネス上の戦略に依存するでしょう。

経済産業省は、「DX推進指標とガイダンス」の中で、DXを以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

DX推進指標とガイダンス(経済産業省)

ここで注目すべきは「顧客や社会のニーズを基に」というフレーズです。あくまで、顧客のニーズに応えるために製品やサービス、ビジネスモデルを変革していくことこそが、DXの本来の意味なのです。

DXの定義の中の1つの要素にしか過ぎない「データとデジタル技術の活用」だけがフォーカスされている事例を見ると、釈然としない気持ちになります。

顧客中心主義を実現するDXの3つの要素

手段が目的化せずに、顧客理解を深め、より良い顧客体験を提供するためには、どのような視点が必要でしょうか。重要な要素として、以下の3つが挙げられます。

顧客を深く理解する

すなわち、顧客のニーズ、行動、心理を分析し、そこから洞察を得ることです。主な手段としては、顧客インタビューやアンケート調査などが挙げられるでしょう。既存顧客とのコミュニケーションが何より重要です。※顧客セグメント見直す場合は、例外的な取組みが必要となるため、上記には限りません。

顧客体験を見直す

顧客へのリーチの仕方、関係性、価値の届け方などを見直すことになります。顧客接点となるチャネルを統合する、あるいは増やす等の検討も必要になるでしょう。ポイントとなるのは、その満足度を高めるために、どのような体験を顧客に提供できるかという視点です。

ビジネスモデル全体を見直す

顧客と顧客体験を中心に据えた上で、次はそれを基にビジネスモデル全体を見直す必要があります。ポイントとなるは、顧客への提供価値や顧客の体験を変革するために、どのようにデータやデジタル技術を活用するのか?という点です。

多くの中小企業の場合、この見直しを行えるのは主に経営者や経営幹部です。外部コンサルタントに頼る場合もありますが、その役割はデータ活用やデジタル技術導入に関する知見の提供に留めるべきでしょう。

なぜなら、見直されたビジネスモデルに対する責任は、最終的に企業の経営層が負うべきものだからです。外部の専門家の客観的な助言も重要なものではありますが、それ以上の役割を担うことは本質的にはできません。

顧客起点の変革が未来を築く

DXを正しく推進することには、大きなメリットがあります。テクノロジーの発展に合わせて、ビジネスモデルを変化させる企業は、顧客のエンゲージメントを高め、市場において競争優位性を築くことができるでしょう。

一方で、顧客を置き去りにした技術偏重な取り組みによって、顧客ニーズに合致しないビジネスになってしまっては意味がありません。最新技術を導入しても、顧客体験が向上しなければ、期待した効果は得られないでしょう。むしろ、顧客離れを招き、逆効果になる可能性さえあります。

DXを成功に導くためには、顧客中心主義を念頭に置き、顧客体験向上のために、どのようにデジタル技術を活用するのか、という視点を持つことが重要です。

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