「働き方改革」「生産性向上」など、様々な言葉が飛び交う現代において、中小企業が限られたリソースの中で最大の成果を上げるためには、ITツールの活用はもはや必須と言えるでしょう。
しかしながら、「種類が多くて何を選べば良いか分からない」「導入したものの、使いこなせていない」といった悩みを持つ経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、中小企業がITツールを導入する際に押さえておくべきポイントを、 「コミュニケーション」「ワークマネジメント」「ナレッジベース」 の3つの型に沿って、具体的なツール名も交えながら分かりやすく解説していきます。
自社の課題やニーズを把握し、それぞれの役割と重要性を理解した上で、最適なツールを選定し、導入することで、業務効率化や生産性向上といった効果が期待できます。
ぜひ、本記事を参考に、自社に最適なITツールを導入し、更なる成長を目指しましょう。
コミュニケーション:リモートワークを想定した対話の基盤
従来の電話やメールでのやり取りだけでは、情報共有のスピードや正確性に限界があります。特に、リモートワークが普及した昨今では、時間や場所に縛られることなく、円滑なコミュニケーションを取ることが、チームで成果を上げるためには不可欠です。
そこで活躍するのがチャットツールをはじめとするコミュニケーション基盤となるツール群です。従来のオフィスでの会話との大きな違いは、コミュニケーションが非同期となることですが、リモートワーク環境でも、比較的、スムーズに意見交換が可能となり、チーム全体の連携強化や意思決定の迅速化、生産性向上に寄与するでしょう。
コミュニケーションの基盤を整える上で重要なのは、そのコミュニケーションの性質に合わせたツールを導入することです。以下に例を示します。
社外向けのコミュニケーション
まだ、多くの企業では、社外とのやり取りにおいては、従来型の電子メールが大きな役割を果たしているようです。
企業間の距離を縮め、スピーディーな対応を可能とするために、チャットツールを導入する例も増えてきてはいますが、相手の都合がある以上は、電子メールでのコミュニケーションは存在し続けるでしょう。
一方で、電子メールの利用は社外向けのコミュニケーションに限定するべきです。社内でのやり取りや特定のプロジェクトやタスクに関するやり取りを電子メールから排除するだけで、処理するべき電子メールの量は各段に減るからです。
また、電子メールの処理方法については、アメリカのブロガーMerlin Mann氏が提唱する「インボックス・ゼロ」や生産性向上コンサルタントのDavid Allen氏の「GTD」の考え方も参考になります。
社内向けのコミュニケーション
社内向けのコミュニケーションは、非同期を前提としたチャットツールを利用することを推奨します。具体的な製品名を挙げるのであれば、SlackやMicrosoft Teams、Google Chatなどになるでしょう。個人的には、Slackの使い勝手が好みです。(弊社では、他のツールとの整合などの都合もあり、Google Chatを使っていますが、近々、Slackに置き換える予定です)
チャットツールを使った非同期なコミュニケーションは、時間や場所に捉われず、自分のペースでメッセージの送受信やファイル共有が可能となります。一方で、チャットに対する返信がいつ来るのか?という点がフラストレーションになるという話も聞こえてきており、その辺りは、コミュニケーションの原則をルール化することで解消するべきでしょう。
もちろん、緊急性のある話題や議論が必要となる場合には、チャットツールに付属する電話機能や会議機能を活用し、同期的なコミュニケーションを取ることになります。その他、ブレインストーミングによるアイデア出しが必要な場合にも、同期的なコミュニケーションを推奨します。
ワークマネジメント:生産性向上の必須ツール
日々の仕事を円滑に進めるためには、個々のタスク管理だけでなく、チーム全体の進捗状況やメンバー各自の負荷状況を可視化することが重要です。
担当者が自身の業務に集中した結果、そのタスクが属人化することは中小企業ではよくあることです。
しかし、自分の仕事や他のメンバーとの締め切りを覚えておくのは難しいものです。各自が独自の方法でタスクを管理しても、認識の齟齬を防ぐことはできず、むしろ状況が悪化する可能性があります。
特にお薦めするワークマネジメントツール
数あるワークマネジメントツールの中でも、特におすすめなのが、「Asana」です。
ポイントは、目標管理からプロジェクト管理、タスク管理という流れがシームレスに統合されていることで、あらゆる業務にスムーズに対応することができます。
以下のような特徴を備えていることが、このAsanaを推奨する理由です。
- 直感的な操作性:
シンプルで分かりやすいUIにより直感的に使いこなすことができる。 - 豊富な機能:
プロジェクトの進捗状況を視覚的に確認できる「ボードビュー」や、タスクの依存関係を明確化できる「ガントチャート」など、チームで仕事を進める上で便利な機能が豊富に搭載されている。 - チームメンバーのキャパシティ管理:
メンバーの稼働状況が可視化されることで、適切なタスク配分が可能になる。
その他にも、他のツールとの連携を想定した統合機能や繰り返し作業を自動化するルール設定ができる点も、作業効率の向上に寄与するでしょう。
無料プランでも十分な機能を試すことが可能ですが、目標設定から最下層のタスク管理までがシームレスに統合される魅力を味わうためにも、Advanced以上のプランを契約することをお薦めしています。
ナレッジベース:知識の集積と共有が組織を強化する
ナレッジベースは「社内wiki」とも呼ばれ、業務に関するマニュアルや手順書、過去の事例、顧客情報などの様々な情報を一元的に集約し、共有するためのデータベースのことです。
このナレッジベースを構築することで、以下のようなメリットが期待できるでしょう。
- 業務効率化:
情報を探す時間を削減し、よりコアな業務に集中することができる。 - 人材育成:
新人社員への教育や既存社員のスキルアップに役立つ。 - 顧客満足度向上:
正確な情報に基づく、質の高いサービスを提供することができる。
情報の種類に応じた最適なツールの選定
一口に「ナレッジベース」と言っても、その種類は様々です。自社の規模や業種、扱う情報の種類に応じて、最適なツールを選定することが重要です。
全社的な共通知識と部署独自の知識のそれぞれで取り扱うツールを分けるという考え方も有効です。
以下に例を示します。
- 全社的な共通知識:
マニュアル、社内規定、議事録など、全社員がアクセスする可能性のある情報は、NotionやConfluenceなど、汎用性の高いナレッジベースツールを用いる。 - 部署独自の専門知識:
営業資料や顧客情報、技術情報などの特定の部署だけがアクセスする情報については、他のシステムと連携して管理する。
もう少し具体的な話を述べますと、顧客の連絡先や営業活動の履歴については、そのすべてをwikiで管理するのではなく、HubSpotなどのSFA/CRM機能を使う方が生産性は上がります。(※HubSpotにはマーケティングやセールス、サービスデスクに関するあらゆる情報を集約することが可能で、広義の意味では、これもナレッジベースと呼ぶことができるでしょう)
ツールの役割分担を見極める
皆さんに「コミュニケーション」「ワークマネジメント」「ナレッジベース」の考え方を理解していただいた上で、ここからが最重要なポイントとなります。
多くのITツールは、ユーザーの利便性を向上させるために、日々の機能拡充に取り組んでいます。例えば、Asanaでは、いわゆるナレッジベースに相当する部分についても、Asana上の「プロジェクト」として取り扱うことを推奨しています。また、Notionは、そのデータベースの機能を活用し、タスク管理をNotion上で行うことを提案しています。
AsanaもNotionも優秀なITツールですが、Asanaはナレッジベースとしての機能でNotionに及ばず、Notionはタスク管理でAsanaに及びません。それぞれのツールの得意分野を理解し、最適な役割分担を検討することが重要です。
まとめ
ここまで、中小企業におけるITツール導入の重要性と、具体的なツールを紹介しながら、3つの型に沿って解説してきました。
ITツールを活用することで、自社の成長に繋げていく視点が特に重要です。本記事の内容が中小企業の皆さまのITツール検討の参考となれば幸いです。