「このまま事業を拡大していくには、人手が足りない…」

事業成長を目指す中小企業の経営者であれば、一度は頭を悩ませたことのある課題ではないでしょうか。

事業拡大には人材の確保が欠かせないことは確かです。しかしながら、安易に「人材採用=問題解決」と考えてしまうのは危険です。なぜなら、闇雲に人員を増やすだけでは、組織全体の生産性低下を招き、逆に成長の足枷になってしまう可能性もあるからです。

今回は、事業成長を加速させるためのワークマネジメントツールの必要性を皆さまにお伝えしたいと思います。「人材採用は最後の手段」と考え、限られた人員でも最大限の成果を生み出す組織作りを目指しましょう。

業務負荷を人材採用が解決するという幻想

多くの企業が経験する「人材不足」問題。しかし、その裏には「人が増えれば、仕事は片付く」という安易な発想が潜んでいるのではないでしょうか?

もちろん、新しい人材は新たなスキルやアイデアをもたらし、組織に活力を与えてくれます。しかし、同時に「コミュニケーションコスト」という新たな課題を生み出すことも忘れてはなりません。

メンバー間の情報共有や連携にかかる時間や労力は、人員増加に伴い、指数関数的に増加していく傾向があります。

例えば、5人のチームに1人メンバーが増えると、コミュニケーションの経路は5本から10本に増加します。さらに人数が増えれば、この増加は加速度的に大きくなり、情報共有の遅延や連携ミス、業務の非効率化を招きかねません。

本当に必要なのは、闇雲に人を増やすことではなく、限られた人員で最大の成果を出す組織体制を構築すること。そして、それを実現するための鍵となるのが、ITツールを駆使した「組織の生産性向上」なのです。

チーム規模とコミュニケーションコストの法則

組織の生産性を向上するためのITツール活用とは、具体的にどのようなものでしょうか?

その答えを知る前に、まずは「チーム規模とコミュニケーションコスト」の関係性について、改めて理解を深めていきましょう。

チームの規模が大きくなるにつれて、コミュニケーションコストが増大する理由は、「コミュニケーション経路の増加」と「取り扱う情報量の増加」にあります。

  • コミュニケーション経路の増加: 
    人員が増えるほど、メンバー間のコミュニケーション経路は指数関数的に増加する。
  • 取り扱う情報量の増加: 
    扱う情報量や業務の種類が増えることで、個々のコミュニケーションに必要な情報量も増加する。

この2つの要員が重なることで、コミュニケーションは複雑化し、これが多くの問題を引き起こす可能性があります。情報共有は遅延し、連携ミス、認識齟齬などによるトラブルも起きるでしょう。こうした問題が引き起こす業務の非効率化は無視できません。

人員を追加する前に、現状の組織の業務を最適化する方が合理的です。コミュニケーションの効率化には、コミュニケーションツールの導入・定着、また、取り扱う情報量の増加に備えるためには、ナレッジベースの導入・定着が有効です。

新たなメンバーの採用は、これらのツールの導入・定着を実施した後に進めるべきです。

「早すぎる」ことはない!ワークマネジメントツール導入

また、「ワークマネジメントツールは、ある程度の規模の組織が導入するもの」という考えも大きな間違いです。ワークマネジメントツール導入に早すぎるということはありません。むしろ、従業員数が少ない段階からの導入こそが、その後の成長を大きく左右すると言っても過言ではありません。

なぜなら、従業員数が少ない段階であれば、新しいツールやシステムに対する抵抗も少なく、スムーズに組織文化に浸透させることができるからです。また、早い段階から業務の「見える化」を進めることで、潜在的な課題や改善点を早期に発見し、適切な対策を打つことが可能になります。

ワークマネジメントツール導入の際には、「従業員のキャパシティ把握」の機能を備えていることを重視しましょう。こうした機能を使えば、従業員一人ひとりの業務負荷状況をリアルタイムに把握することができ、以下のようなメリットがあります。

  • 業務の偏りや過剰な負荷を防止: 
    特定のメンバーに業務が集中するのを防ぎ、従業員の負担を軽減することができる。
  • 適切な人材配置やタスク管理を実現: 
    各メンバーのスキルやキャパシティに応じた、最適なタスク割り当てが可能となる。
  • 人材不足の予兆を早期に察知: 
    キャパシティを超える業務が発生した場合、人材不足への迅速な対策が可能となる。

人員追加は最後の手段:お薦めのワークマネジメントツール活用法

新規人材の採用は最後の手段となります。ここでは、ワークマネジメントツール上での人材不足解消のシナリオの例をご紹介します。

ここでのお薦めの使い方は、存在しない従業員の「仮アカウント」を設定する方法です。

ステップ1:従業員一人ひとりのキャパシティを可視化する
 まずは、ワークマネジメントツールの機能を活用し、従業員一人ひとりの業務負荷状況を可視化します。

ステップ2:タスク増加時に「仮アカウント」を作成
 事業立上げや既存事業拡大など、業務増加の際には、「仮アカウント」をツール上に作成することがお薦めです。

ステップ3:仮アカウントへのタスク割り当てで、業務負荷をシミュレーション
 従業員一人ひとりのキャパシティを超えるタスクは、この「仮アカウント」に割り当ててみます。もしも、キャパシティに余裕のある従業員がいた場合には、「仮アカウント」に割り当てられたタスクをその従業員に割り振りなおしましょう。これにより、実際の人員を増やす前に、業務負荷をシミュレーションすることができます。

ステップ4:採用が必要な場合、スムーズなオンボーディングに活用
 こうしたシミュレーションの結果、人員増加が必要だと判断した場合、新メンバーを採用することになりますが、仮アカウントの情報は、新メンバーのオンボーディングにも活用できます。事前に業務内容や必要な情報が整理できていれば、新メンバーのスムーズな立ち上がりを支援することもできます。

まとめ:戦略的なITツール導入が持続可能な成長に繋がる

戦略的なITツール導入は、事業成長を加速させるための「投資」です。ワークマネジメントツールなどのITツールを活用することで、組織を最適化し、その能力を最大限に引き出すことが重要です。

ITツールを最大限に活用し、人と組織の可能性を最大化することで、変化の激しい時代を生き抜き、持続可能な成長を実現しましょう。

このブログが、皆さまの事業の安定的な成長の一助となれば幸いです。